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2025年1月24日(金)

「ダウン症を持った子供の明るい未来を実現したい」~児童発達支援施設を運営する石井さんの挑戦~(鵠MAI)

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<児童発達支援「にじいろ」代表社員 石井 裕太さん(43)>


石井さんは、ダウン症のある子どもの成長をサポートする施設「にじいろ」を運営している。

長男がダウン症を持って生まれ、従来の支援の在り方や施設への課題を感じたことがきっかけになった。

「より良い成長と明るい未来を切り開きたい」。石井さんは、熱い心持ちを抱き、活動を続けている。


――藤沢にダウン症に特化した施設「にじいろ」を開設して、間もなく4年になります。どのような経緯で開所したのでしょう。


はい。今年7歳になる長男の誕生がきっかけでした。

飲食を中心とした会社と全国に美容室を展開する会社の運営に携わり、38歳で独立。

家庭を持って東京で生活していました。


長女が生まれた後、36歳で授かった長男にダウン症があり、どのように育てていこうかと考えていました。

近くの児童発達支援の施設に生後3カ月から預かってもらうことが出来、少し将来のことを考える時間が持てたんです。

相談にものってもらい、助けて頂いた。でも、預かってもらえる時間が短かった。


1日で1、2時間なんです。療育には時間をかけたほうが良いし、家族も時間的余裕が持てたほうが良い。

「であれば、自ら考える施設を作ってみよう」と思い立ちました。

石井さんご一家

都内では難しいと考えて、湘南地域で物件を探しました。

横浜生まれで、若いころから鵠沼海岸でサーフィンをしていたので、この地にも馴染みがあったのも理由です。

書類の作成や開設資金の準備、不動産会社への相談と走り回り、2021年5月に藤沢の北口にあるマンションで「にじいろ」を開設することができました。


――パンフレット見ると「ダウン症児に特化」「長時間お預かり」「0歳児から受け入れ可能」「集団療育」といった言葉が並んでいます。


私たちが「このような施設だったら良いな」と考えた内容を実践しています。

ダウン症対応に特化することで、療育の内容も充実させることができます。

朝9時半から午後4時までの長時間預かりができると、家族の方にも余裕が生まれます。


0歳児から、というのも大事な要素。

家族にあまり負荷がかからない施設や療育内容であることが重要なんです。

私たちも苦悩や葛藤、親が抱える気持ちを経験してきたので、よく理解できます。

早期療育がいかに重要かも知っていますし、その子の得意を伸ばし、苦手をサポートすることで可能性を広げられると考えているのです。

この施設は全国でも類例がないと思います。

『にじいろ』の部屋

――運営は最初から順調に?


開設当初は、運営もたいへんでした。

入所募集をしても、ほとんど集まらなかった。SNSで告知すれば、広く存在を知ってもらえると考えたのですが、そうではなかった。

半年後には運営に行き詰まり「もう閉所しようか」と追い詰められました。


でも、ダウン症児の親のほか、友人、知人らから「なんとか頑張ってほしい」と激励され、クラウドファンディングで資金調達を開始したんです。

知り合いからメディアやジャーナリストも紹介してもらい、ユーチューブや番組でも取り上げてもらうことができ、なんとか存続が可能になりました。

人の繫がりのありがたさを心から実感しました。


専門資格を持つ力量のあるスタッフが集まってくれて、今では11人のスタッフに利用在籍者も約70人に増えました。

利用される家族の方が、運営方針を支持してくださり、我々も力をもらっています。

この施設の存在を知り、四国地方など県外から移住してこられたご家族もいます。

神奈川県内でも西は小田原から、東は横須賀や東京から通所されている方もいます。

平日だと平均して10人ほどのお子さんが「にじいろ」で過ごしています。

――どのようなプログラムなのでしょう。


開所は月曜日から土曜日まで。

朝10時から「朝の会」を始め、10時半ごろから「療育プログラム」が始まります。

理学療法士が常駐しており、英語やリトミックも取り入れて、遊びを通して一人ひとりの成長にあった療育プログラムを組んでいます。

お昼には持参してもらったお弁当を食べ、お昼寝の時間、おやつの時間もあり、16時ごろにお迎えにきてもらう、そのような一日です。

月に1回、家族交流会も開いています。

『にじいろ』の部屋

――子どもの可能性を広げていく療育には、保護者らの賛同が欠かせません。


はい。その子の<得意>を見つけて、伸ばしていく。

ダウン症の子って、おとなしい子が多いのです。

大人の視点で云えば「手がかからない子」。すると、社会から放っておかれがちなんですね。

社会の仕組みがそうさせている。


でも「やり甲斐」「好きなこと」「得意なこと」が見つかり活動している子は実に生き生きしているんです。

輝いているんですよ、ダウンちゃんが。実感します。


それに気が付くまでに親や保護者は時間がかかる場合もあります。泣いているお母さんたちも少なくない。

「そうではありませんよ」と伴走すると、ホッとされ、元気になってもらえます。

石井さんと子供達

――「にじいろ」は小学校入学前の子どもが対象です。その後の対応は考えていますか?


この2月に辻堂で「にじいろ 小学生の部」を開設します。

公文式なども取り入れて、学校が終わった後、午後の時間に設けようと考えています。学童保育のようなイメージです。


それが軌道に乗ったら「中学」「高校」と対象を広げていきたい。

ここまでは<療育>中心の考え方ですが、その先も見ています。

就労支援なんです。


ダウン症を持つ方の就労は、現在とても難しい。仮に仕事に就いても収入が極めて乏しいのが現実なんです。

それを改善したい。将来的にNPO法人を作り、ダウンちゃんたちの仕事を作りたいんです。

いま、3カ月に一度程度の頻度で「父親たちの会」を開いて、検討を進めています。

人の繫がりを生かしていけば、目標に到達できるのではないか。

そんな希望を持っています。

HPのQRコード

<児童発達支援 にじいろ>

所在地:藤沢市藤沢1063-13 アクアビル藤沢第9 5階

電話:0466-90-3500

藤沢駅北口 徒歩8分



この記事を書いた人
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    澤 圭一郎(毎日新聞)

    1964年生まれ。鵠沼の生まれ育ちでいまも居住。
    89年、毎日新聞入社。
    社会部記者として東京都庁や文部科学省、国会を担当。
    アテネ五輪特派員、ペルー大使公邸人質事件などの海外取材も。
    社説を担当する論説委員を経て、現在編集委員

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